Far North Publishers Meeting

YYY PRESS

New Habitations: from North to East 11 years after 3.11
トヤマタクロウ, 瀬尾夏美

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版元より:

東北の沿岸部に行って、現在の住宅環境や暮らしの風景を本にしませんか、と、編集の柴原聡子さんから誘われたのは2022年の初夏だった。

3.11の震災から11年が経ち、ひと段落したかに見えるその場所を写真と言葉で記録したい、という話に、今までその土地にあまり触れてこなかった自分は少し怯んだ。が、現地で復興を見続けたくさんの話を聴いてきた瀬尾夏美さんに詩を寄せてもらうこと、彼女から「旅人の視点で感じたことを入れてほしい」という声かけをもらったことで、写真はトヤマタクロウさんにお願いすることになり、その4人で取り組むことで自分もなにかできるかもしれないと思うようになり、なんとか腹が決まった。

何度か現地を訪れ、約1年間をかけて見てきたものをまとめた、たった1年ではあるが、復興という言葉がはらむ問題、都市と地方の関係、そして、個人の声と同じ場所で過ごす集合体としての土地の声、等について考えていくきっかけとなった。

2024年は能登の震災で幕が開けてしまった。なにもまだひと段落などしてはいないのだ。(米山)

藤田

いままでのYYY PRESSの出版物とはすこし毛色の異なるもの。編集者、詩人、写真家というコラボレーターを得てより広いテーブルでより大きな話をしているが、しかしそこで示されるものは決してイデオロギーにはならず個人的な、ささやかな、でも確かにそこにはっきりとあるものたちの吐露である。そういう意味ではとてもYYY PRESSらしい本。表紙が白すぎてその決断力にたじろぐ。

川崎

東日本大震災をきっかけに陸前高田市に移住しリサーチ・制作を続けてきた詩人・瀬尾夏美と、写真家・トヤマタクロウによる写真詩集。瀬尾さんが辿ってきた土地の声と、その積層のうえにあらわれた現在を捉えたトヤマさんの写真。どう描いても感情に起伏を生むテーマを、過剰な描写の一切を避け、静かさによって強度を生んでいる。

白石

震災からのフィードバックを受けて様々な作家が創作を行っていると思うが、このプロジェクトはこれまでのものとは少し違ってプレゼンテーションの体温が低い印象を受けるが、質量はかつてないほど重く感じる。詩も写真も美しく感じてしまうが、それをどう処理すれば良いのかわからなくなる。表面がさらっとしすぎているが、色々考えてみるとこれしかあり得ないという考えになる。しかしここに辿り着くのはかなり難しいことである。