Far North Publishers Meeting

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松本直也

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版元より:

この写真集は、写真家・松本直也さんから「個展のために本をつくりたい」という依頼をもらってつくられた。

掲載されている写真は、父親〜彼〜彼の息子の関係性を軽やかに掬ったものだ。彼は、自分の父親がどこからか拾い集めてくる「がらくた」みたいなものを最初は理解できず、少し疎ましく感じていたという。

だが、彼のパートナーが妊娠し、実家に帰ることが増え、そんなとき父の集めた「がらくた」とふと戯れていると、それが顔や生き物に見えてくる瞬間があり、だんだんそれを触りながらまだ見ぬ息子のことを思い浮かべるようになり、なんとはなしにそれらを組み合わせてコンポジションをつくり、写真に撮り始める。

その「がらくた」が溢れる軒下にお伺いしたことが何度かあるが、そこは、気負わない遊び心が張り巡らされた気持ちのよい「アトリエ」で、手で考えること、思い立ったらやってみること、そういう気持ちを後押ししてくれる何かがあった。(米山)

藤田

この本に出てくるオブジェはランダムな素材でつくられ、とりとめなく作り続けられているようだ。それ自体に目的も指向性もなさそうに見えるが、一冊の本にまとめられることによって、それがどういったことなのか輪郭が与えられる。写真家とその父親の交流というのが制作の背景にあるようだが、明確なことは示されない。全体を通して個人的でささやかな行為が描かれているが、そういった声を拾って示すという点で、版元の方向性が感じ取れる。

なぜかこの本の表紙はマットでしっとりとした本だと思い込んでいたが、久しぶりに触ったらさらさらとしていた。軽やかだった。

川崎

写真家・松本直也が、実父が拾ってきたガラクタを使って、創作したオブジェを撮り下ろした作品集。流木や鉄くず、木片、ダンボールなどを、置いたり、立てかけたりしながら、ユニークな作品がつくられている。

組み合わせによって変形し、ものの見え方を変えていくこの遊びは、父と息子の関係性を変化させたのだろう。オブジェは時折、かつて父親が盆栽を育てていたであろう場所で、あるいは皺が刻まれた手のひらの上で撮影されている。父親と「一緒にいられる時間を作りたい」(本文より)と素直に書けるようになった作家自身の変化を少しうらやましく思う。

白石

松本直也氏とは、彼のウェブサイトの制作を担当させていただいた経験があり、個人的な親交がある。彼は日常的に多くの言葉を交わすタイプではないものの、写真作品においては、対象を深く掘り下げ、その本質を明らかにする独特の魅力を持っている。

彼の父親との日常的な会話の内容については詳らかではないが、父親の作品を拝見するに、息子と同様の内省的な雰囲気を感じ取ることができる。

目に見えて非常に親密な関係性を感じ取れるわけではないが、この本や作品を通じて、父と子の間で何らかの意識の交流が行われていることが伺え、それが彼らしいと思う。