Far North Publishers Meeting

YYY PRESS

GATEWAY 202012

☞ 本の概要
☞ 寄せられたコメントを見る
版元より:

YYY PRESSが2015年から発行しているオムニバス書籍の4号め、現状の最新刊。

「人の話を聴く」をテーマにリレーインタビューやエッセイ、ドローイング、写真などを綴じた。この号をつくった時期はジョージ・フロイド事件を発端としたBLACK LIVES MATTER運動が巻き起こっていて、抗議活動として真っ黒になったInstagramを目撃し、その活動に対しての色々な反応を受け、「何が善い振る舞いなのか、どう考え、どう動いたらよいのか、まったくわからない」という底が抜けたような不安があった。

まず自分に出来ることは、わからないことを前提として人の話を聴くことなのではないか。まずは自分の考えを差し挟まず、隣の人の話を傾聴する。どこまで話を丁寧に聴けるのか。そこからスタートしたい。そう考えたことがこのテーマ設定となった。(米山)

藤田

コロナ禍にリリースされたことは無視できないであろう、コミュニケーションについての思考の号。

紙媒体へのノスタルジーでも、所有欲でも、特別感でもなく、ただこの場(=GATEWAY)でしか語り得ないものはなにかを探っている。適切な場を用意しないと語れない/語られないものがある。紙媒体は他メディアと比べると圧倒的に”遅い”が、可塑性に富み、ナラティブを内包することができ、深く潜ることのできるメディアで、米山氏は10代の頃からそういったコミュニケーションに勇気付けられてきたのであろう。

あらゆる事が加速していく中で、遅効性の媒体を選んでいるという事自体、ひとつの批評でもある。YYY PRESSの「YYY」は、「ゆっくり・よく・よむ」という解釈もあるらしい(諸説ある)。

川崎

「雑誌」と呼ばれるものには明確な定義があり、この「雑誌のようなもの」を指す言葉として「オムニバス書籍」と呼んでいると聞いた。とても米山さんらしいと思った。

「人の話を聴く」がテーマの今号では、語り手が聞き手となり、リレー形式でインタビューが進む。語られた言葉それぞれと向き合いながら、ひとつずつ積み重ねたそれらの集積として一冊の本となっている。きっと、あらかじめ完成図を描かずにつくられているだろう気配に安心する。

途中、小山田孝司の作品集『なにがみてるゆめ』がまだ刊行される前の、このプロジェクトの写真がある。被写体と撮影者が明かされ、この関係性を示唆するエッセイが収録されている。それがまだ進行形であること、「いま、この瞬間」が綴じられている感触に、どの雑誌よりも雑誌らしい本だと思った。

白石

米山氏の編集的な視点が存分に注ぎ込まれた1冊。グラフィックデザイナーという職能を拡張していると同時に、本来はこうあるべきであるという本質的な結論に辿り着く。

表面はさらっとしているのに中はとても熱いものがある。軽やかにヤバいことをしているというのが米山氏の特異性である。