Far North Publishers Meeting

YYY PRESS

Common Face
吉川周作

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版元より:

写真を取り巻く状況は激しく変わっている、というのは写真を考える人にとっては自明のことかもしれないが、写真に限らず今は何もかもが目まぐるしく変わっているから写真もそうなるだけなのかもしれない。ともかく、写真を「いま」「どう撮り」「どう発表するか」というのは写真を考える人にとってはなかなかの難題なのではないかと思う。そして、写真を「いま」「どう本にするか」も共に難題だ。

この本は、写真家・吉川周作さんが浅草で展示をして(事務所とオルタナティブスペースは東京五輪のあとに神宮前から浅草に引っ越した)、そのアーカイブとしてつくった図録だ。展示は、「写真をどう定着させるか」に着眼点を置き、つまり「写真を各種のメディウムに適切に定着させること」それ自体がテーマとなっており、そのテーマをさらに「本というメディウムにどう定着させるのがよいのか」という入子構造のような問題をどうかたちにしたらよいのか、半年間くらいかけて話し合いながら制作した。(米山)

藤田

ある写真家の思索を、ポスター状のページを開くという行為を内包する造本によって表現している。紙に印刷されて製本されている時点で表現は固定されているはずなのに、紙を開いたり閉じたりすることでモチーフの全体とディテールが入れ替わり、動的である。

表紙らしい表紙も、カバーも、背もない造本からして、この本は表現を固定化する装置ではなく、表現が進行形であることを示す装置であると解釈した。

川崎

STUDIO STAFF ONLYで開催された、写真家・吉川周作の展覧会「Common Face」の記録集。作品の全体像を収めた写真と、一部分を捉えた写真が表裏になるよう構成され、四つ折りのページをひらくと大きなサイズで写真を見ることができる。写真の規則性を造本に用いているように見えるが、写真の距離と用紙サイズのルールが必ずしも一致せず、その違和感がページをめくる手を鈍らせる。全体と細部を往復する展示体験のそれを本で再構築したような一冊。

白石

ぱっと見で豆腐のような本である。

本の中に特にステートメントがあるわけではない。造本も普通ではなく、思うように前へ進むことができない。写真1枚1枚について考えるというよりも、とにかく全体というのを意識させられる。そういうことを考えていると逆に写真に写っている細かい部分にも目がいってしまう。その味方が合っているのか間違っているのかはわからないが、とにかく一筋縄ではいかない本である。

米山さんは本に人格を与えるのがとても上手い。